悠久の時間
唯一の飲み友だちとも言えるたかべーから、新世界への誘いを受けた。
言い方がアレだが、大阪の新世界に飲みに行こうという誘いを受けたということだ。
日程を決めて、新世界の情報を食べログやYouTubeで探し、めぼしい店を選んでいる時間はとても楽しかった。
「のんきや」「ホルモン道場」で一頻り飲み、「千成屋」でミックスジュースを飲む。彼女とのデートプランを考えてるかのような気分。
だってたかべーと飲めるんだから。
どこへ行くかは問題ではない。誰と飲むかが重要であり、行く場所がさらに良いともっと楽しい時間を過ごせるはずだから。
その数日後、予定していた日に仕事が入ったという知らせがたかべーから届く。責めるつもりは毛頭ないし、仕事なら仕方ないが、この数日の期待感を全て覆される思いだった。
こうなると誰と行くかなど本当に問題ではない。
そもそも一人での外出を億劫に思ってしまう性分だが、この期待感をなかったことにすると自分を裏切ることになる。今月誕生日の人のプレゼントを買いに、大手書籍屋へ漫画を買いになど色々理由をつけて、一人で目星をつけていた店に行く決意を固めた。
当日、結論から言うと「のんきや」「ホルモン道場」は休業日だった。
戸惑ったものの似た感じの店がそこかしこにあり、露頭に迷うこともなく、「ふじやま」も「佐兵衛すし」もとても良いお店で満足した。
三度目の正直、「千成屋」でのミックスジュースを楽しみに店に入るも満員で入れず。
新世界には神も仏もいない。
横丁を出たところに玉一という喫茶店があり、ショーウィンドウに置かれたプリンアラモードが目に入った。
子どもを相手にする仕事をしているが、子どもはプリンアラモードが好きだ。LaQで一緒に作ったりする。僕も好きだ。
童心に戻ってプリンアラモードを食べることにした。
店内は落ち着いた雰囲気で客も少ないが、レトロでもありモダンでもある、程良い空気感が漂う。
プリンアラモードとコーヒーを交互に嗜みながら、口内に甘みと苦みの永久機関を楽しんだ。
同行していたはずのたかべーは今ここにいない。
もし一緒にいてたら、もっと楽しかったのかというタラレバの話しは無粋だし、また後日、休業していた店に二人で行こうという余韻がまだ先に続く。
昼から飲んで喫茶店で落ち着ける満足感を噛みしめながら、このブログを書いていたら溶けきってしまったアイスを眺めながら、この悠久の時間に浸っている。
一瞬で、永遠に感じる時間がこれから先たくさんあるならば、それでいい。